2025/11/28
「宇宙はビッグバンから始まった。」
こんな言葉を聞いたことがある方は多いのではないのでしょうか?
現在の宇宙は、夜空いっぱいに広がる星々を包み込むほど広く大きいものですが、ずっとずっと昔に遡っていくと小さな小さな熱い火の玉だった。それがビッグバンであると。
「ふむふむ、宇宙の始まりは小さくて熱々だったんだな」と納得してしまったそこのあなた!一つ質問があります。
「そもそもなぜ宇宙はビッグバンから始まったと言われているのでしょうか?」
はて?と首を傾げたあなた、チコちゃんが出てきたら叱られますよ(笑)。
でも大丈夫。著名な宇宙論研究者の佐々木節先生のこの講義を聞けば、宇宙の始まりから終わりまで、なんと30分で理解できてしまいます!
この記事では、佐々木先生の講義をさらに分かりやすくしたダイジェストをお送りします。興味を持った方はぜひ講義をご覧ください。
聞いたら人に話したくなること間違いなし!宇宙の始まりへ、レッツゴー!
UTokyo Online Education 東京大学公開講座「宇宙」 2024 佐々木節
宇宙はビッグバンから始まった
そもそもなぜ人々はビッグバンなどという突飛なものを考え始めたのでしょうか。
それは遡ること1920年代、天文学者エドウィン・ハッブルらによって、遠くの銀河ほど速く遠ざかっているという、今ではハッブル・ルメートルの法則として知られる観測的事実が見つかった頃です。
UTokyo Online Education 東京大学公開講座「宇宙」 2024 佐々木節
これはまるで宇宙が地球を中心として広がっているように思われるかもしれませんが、実はこれは宇宙全体が一様に膨張しているため起きている現象で、どの地点から見ても自分から離れていくように見えます。例えば、宇宙を風船の表面に見立ててみると、風船を膨らませたときに表面上のどの点もお互いに離れていくように見えると思います。原理的には同じです。
UTokyo Online Education 東京大学公開講座「宇宙」 2024 佐々木節
宇宙が膨張している!という事実は驚きですが、とりあえずそれを認めて過去に遡っていくとどうなるでしょうか?
今宇宙が大きくなっているということは、過去に遡るほどどんどん小さくなって、しまいには米粒よりもはるかに小さくなってしまう…そんな過去が想像できそうですよね。そう、それが、ビッグバンです!
UTokyo Online Education 東京大学公開講座「宇宙」 2024 佐々木節
最初はギュウギュウで熱々の地獄のスープのようなビッグバンの状態から、膨張とともに宇宙が冷えていき、現在あるような銀河や星が生まれていった…それが現代宇宙論の解釈です。
もちろんこれだけでは想像の域を出ませんが、実際にビッグバンの残光とされる宇宙マイクロ波背景輻射が観測されていたりと、さまざまな科学的証拠がビッグバンを支持しています。
ちなみにこれは有名な話ですが、ビッグバンという名前は、この仮説に批判的だったフレッド・ホイルという天文学者がラジオで皮肉を込めて呼んだのが最初のようです。まさに「敵に塩を送る」ですね。
ビッグバンの前はインフレーション?
さあ、宇宙の始まりにはビッグバンがありましたとさ。おしまいおしまい。
と、ならないのが宇宙の面白いところです。実はビッグバンだけでは解決できない謎が宇宙には多く残されています。その一つが平坦性問題と呼ばれるものです。
かの有名なアインシュタインが考えた一般相対性理論によると、物質やエネルギーの存在は時空を曲げてしまいます。時空を曲げる、と言ってもイメージが湧かないと思いますが、時空を伸縮できるゴムシートのようなものだと思ってもらうと、物質の存在は時空を球面や馬の鞍形のような形に曲げてしまうのです。
UTokyo Online Education 東京大学公開講座「宇宙」 2024 佐々木節
もちろん宇宙には物質がありますから、普通に考えたら時空はぐにゃぐにゃになってしまいそうですが、宇宙スケールで見ると驚くほど平らで真っ直ぐなことが知られていて、これが平坦性問題と言われています。
これを解決する一つの有力な仮説が、インフレーション仮説です。これは、宇宙がビッグバンの前に急激な膨張を経験したため、もともと曲がっていた時空がぴーんと張られて真っ直ぐになってしまったというものです。
例えばあなたが持っている風船の表面が曲がっていることは容易に分かりますが、それが地球サイズの風船だったら、曲がっているかどうかを確かめるのは難しいですよね。我々の宇宙は宇宙全体のほんの一部であるため曲がっていないように見えるというのが、インフレーション仮説による平坦性問題の解決方法です。
UTokyo Online Education 東京大学公開講座「宇宙」 2024 佐々木節
このインフレーション仮説は正しそうではあるものの、実際に検証されたわけではありません。原始重力波と呼ばれる宇宙初期からやってくる時空のさざ波はインフレーションによって生じると予測されていて、実際に観測されれば間違いなくノーベル賞ものです!
インフレーションの前は?
では、インフレーションの前には何があったのでしょうか?
いよいよ宇宙の誕生の瞬間を考える必要がありますが、これは現代の物理学者を悩ませる難問です。なぜなら、宇宙初期という小さな時空においては、宇宙の変化を扱う一般相対性理論を、ミクロなスケールを扱う物理学である量子力学と統合する必要があるからです。実はこれらは相性が悪いことが知られており、今のところ統合の見通しは立っていません。
宇宙の誕生については、時空が小さなスケールで見ると泡立っていて、その泡の一つが大きくなることで今の宇宙ができた、という泡宇宙仮説もありますが、宇宙の始まりに何が起こったのか、今も謎のままです。
UTokyo Online Education 東京大学公開講座「宇宙」 2024 佐々木節
最後に
さあ、宇宙の始まりに何が起こったのか、大まかなイメージは掴めたでしょうか?
時空の泡として生まれた宇宙がインフレーションという急激な膨張を経験し、ビッグバンという熱い火の玉となった…そんなフィクションのようなことが本当に起きていたのかもしれません。
講義では宇宙の終わりについてもさらに詳しく説明されています。
30分程度の短い講義なので、日常の中に「宇宙」という非日常を。ぜひご視聴ください。
https://youtu.be/4W5DrpqCGlY
<文/近藤圭悟(東京大学学生サポーター)>
今回紹介した講義:第139回(2024年秋季)東京大学公開講座「宇宙」 宇宙論最前線:宇宙の誕生と進化 佐々木節先生
●他の講義紹介記事はこちらから読むことができます。
こんな言葉を聞いたことがある方は多いのではないのでしょうか?
現在の宇宙は、夜空いっぱいに広がる星々を包み込むほど広く大きいものですが、ずっとずっと昔に遡っていくと小さな小さな熱い火の玉だった。それがビッグバンであると。
「ふむふむ、宇宙の始まりは小さくて熱々だったんだな」と納得してしまったそこのあなた!一つ質問があります。
「そもそもなぜ宇宙はビッグバンから始まったと言われているのでしょうか?」
はて?と首を傾げたあなた、チコちゃんが出てきたら叱られますよ(笑)。
でも大丈夫。著名な宇宙論研究者の佐々木節先生のこの講義を聞けば、宇宙の始まりから終わりまで、なんと30分で理解できてしまいます!
この記事では、佐々木先生の講義をさらに分かりやすくしたダイジェストをお送りします。興味を持った方はぜひ講義をご覧ください。
聞いたら人に話したくなること間違いなし!宇宙の始まりへ、レッツゴー!
UTokyo Online Education 東京大学公開講座「宇宙」 2024 佐々木節
宇宙はビッグバンから始まった
そもそもなぜ人々はビッグバンなどという突飛なものを考え始めたのでしょうか。
それは遡ること1920年代、天文学者エドウィン・ハッブルらによって、遠くの銀河ほど速く遠ざかっているという、今ではハッブル・ルメートルの法則として知られる観測的事実が見つかった頃です。
UTokyo Online Education 東京大学公開講座「宇宙」 2024 佐々木節
これはまるで宇宙が地球を中心として広がっているように思われるかもしれませんが、実はこれは宇宙全体が一様に膨張しているため起きている現象で、どの地点から見ても自分から離れていくように見えます。例えば、宇宙を風船の表面に見立ててみると、風船を膨らませたときに表面上のどの点もお互いに離れていくように見えると思います。原理的には同じです。
UTokyo Online Education 東京大学公開講座「宇宙」 2024 佐々木節
宇宙が膨張している!という事実は驚きですが、とりあえずそれを認めて過去に遡っていくとどうなるでしょうか?
今宇宙が大きくなっているということは、過去に遡るほどどんどん小さくなって、しまいには米粒よりもはるかに小さくなってしまう…そんな過去が想像できそうですよね。そう、それが、ビッグバンです!
UTokyo Online Education 東京大学公開講座「宇宙」 2024 佐々木節
最初はギュウギュウで熱々の地獄のスープのようなビッグバンの状態から、膨張とともに宇宙が冷えていき、現在あるような銀河や星が生まれていった…それが現代宇宙論の解釈です。
もちろんこれだけでは想像の域を出ませんが、実際にビッグバンの残光とされる宇宙マイクロ波背景輻射が観測されていたりと、さまざまな科学的証拠がビッグバンを支持しています。
ちなみにこれは有名な話ですが、ビッグバンという名前は、この仮説に批判的だったフレッド・ホイルという天文学者がラジオで皮肉を込めて呼んだのが最初のようです。まさに「敵に塩を送る」ですね。
ビッグバンの前はインフレーション?
さあ、宇宙の始まりにはビッグバンがありましたとさ。おしまいおしまい。
と、ならないのが宇宙の面白いところです。実はビッグバンだけでは解決できない謎が宇宙には多く残されています。その一つが平坦性問題と呼ばれるものです。
かの有名なアインシュタインが考えた一般相対性理論によると、物質やエネルギーの存在は時空を曲げてしまいます。時空を曲げる、と言ってもイメージが湧かないと思いますが、時空を伸縮できるゴムシートのようなものだと思ってもらうと、物質の存在は時空を球面や馬の鞍形のような形に曲げてしまうのです。
UTokyo Online Education 東京大学公開講座「宇宙」 2024 佐々木節
もちろん宇宙には物質がありますから、普通に考えたら時空はぐにゃぐにゃになってしまいそうですが、宇宙スケールで見ると驚くほど平らで真っ直ぐなことが知られていて、これが平坦性問題と言われています。
これを解決する一つの有力な仮説が、インフレーション仮説です。これは、宇宙がビッグバンの前に急激な膨張を経験したため、もともと曲がっていた時空がぴーんと張られて真っ直ぐになってしまったというものです。
例えばあなたが持っている風船の表面が曲がっていることは容易に分かりますが、それが地球サイズの風船だったら、曲がっているかどうかを確かめるのは難しいですよね。我々の宇宙は宇宙全体のほんの一部であるため曲がっていないように見えるというのが、インフレーション仮説による平坦性問題の解決方法です。
UTokyo Online Education 東京大学公開講座「宇宙」 2024 佐々木節
このインフレーション仮説は正しそうではあるものの、実際に検証されたわけではありません。原始重力波と呼ばれる宇宙初期からやってくる時空のさざ波はインフレーションによって生じると予測されていて、実際に観測されれば間違いなくノーベル賞ものです!
インフレーションの前は?
では、インフレーションの前には何があったのでしょうか?
いよいよ宇宙の誕生の瞬間を考える必要がありますが、これは現代の物理学者を悩ませる難問です。なぜなら、宇宙初期という小さな時空においては、宇宙の変化を扱う一般相対性理論を、ミクロなスケールを扱う物理学である量子力学と統合する必要があるからです。実はこれらは相性が悪いことが知られており、今のところ統合の見通しは立っていません。
宇宙の誕生については、時空が小さなスケールで見ると泡立っていて、その泡の一つが大きくなることで今の宇宙ができた、という泡宇宙仮説もありますが、宇宙の始まりに何が起こったのか、今も謎のままです。
UTokyo Online Education 東京大学公開講座「宇宙」 2024 佐々木節
最後に
さあ、宇宙の始まりに何が起こったのか、大まかなイメージは掴めたでしょうか?
時空の泡として生まれた宇宙がインフレーションという急激な膨張を経験し、ビッグバンという熱い火の玉となった…そんなフィクションのようなことが本当に起きていたのかもしれません。
講義では宇宙の終わりについてもさらに詳しく説明されています。
30分程度の短い講義なので、日常の中に「宇宙」という非日常を。ぜひご視聴ください。
https://youtu.be/4W5DrpqCGlY
<文/近藤圭悟(東京大学学生サポーター)>
今回紹介した講義:第139回(2024年秋季)東京大学公開講座「宇宙」 宇宙論最前線:宇宙の誕生と進化 佐々木節先生
●他の講義紹介記事はこちらから読むことができます。