以前、東京大学地震研究所の纐纈(こうけつ)先生による、地震研究・地震観測の講義についての記事をお届けしました。
東大TVでは、他にも、地震研究所の動画をたくさん視聴することができます。
それらの多くは東京大学の地震研究所のYouTubeチャンネルから提供されているのですが、とても充実していて、地震研究に馴染みのない初心者でも理解できる分かりやすい説明動画がアップされています。
https://www.youtube.com/@earthquakeresearchinstitut9603/featured
今回は、中でも、東大TVで「高校生のための東京大学オープンキャンパス」として公開している、短い動画を選んでご紹介します。
2020年度 高校生のための東京大学オープンキャンパス
Waves from the underground:地震観測について
地震研究所の活動紹介をするPR動画です。
ドローンでの空撮やBGMがハリウッド映画みたいで、かっこよすぎるので思わず見惚れて引き込まれてしまいます。
地震が起きると、我々はニュースなどでたくさんの情報を目にします。
その情報源となる地震の観測や研究は、実際にはどのように行われているのでしょうか。
この動画では、大きな地震が発生した後の余震観測を行う様子を例に挙げて紹介しています。
機材の準備・搬出・地震計の設置・データを取る様子など、我々が目にする機会がない貴重な場面の連続です。
また、研究・観測だけでなく、独自の機器の開発やメンテナンスを担う技術者の方々の様子も。
とにかく、かっこいいです。
2020年度 高校生のための東京大学オープンキャンパス
学生実験① 津波実験
学生さんたちが、津波を発生させる装置を使った実験を見せてくださる、デモンストレーションの動画です。
普段、私たちが海に行くと目にしている海面の「波」と、大きな「津波」とでは、どういった点が違うのでしょうか。
それは、波が起きている深さに関係があります。
実験では、このような水槽に水を張った装置を使用して、波の動きを再現します。
画像右側のように足を踏み込むと(①)、左側の水槽に波が発生します(②)。
深いところから揺さぶられるような波長の長い波が発生し、海底に立っていた人形が揺られて倒れ始めました。
現実に津波が起きる要因は様々です。
津波は、発生したところから、海岸に近付いてくるに従って減速しますが、それでも人間の足で逃げられない速さでやってきます。
また、地形の影響でさらに波が高くなることもあるようです。
やはり、急いで高い所に逃げることが重要ですね。
実際の津波の高さは、「潮位計」や「海底水圧計」というもので測っているそうです。
動画では、その実際のモニターの様子も見せてくれますよ。
2020年度 高校生のための東京大学オープンキャンパス
学生実験② バネブロック実験
こちらも、大学院生のみなさんによるプレゼンテーションと実験のデモンストレーションです。
さて、普段、ニュースで聞く「震度いくつ、マグニチュードいくつ」という数字ですが、「マグニチュード」とは何でしょうか?
マグニチュードの大きさは、地震の大きさ(規模)です。
小さな地震は世界中で(我々が気付かない間にも)頻繁に起きているようです。
このような地震を観測したいとき、実際に地震を起こして観測・研究をすることはできません。
そこで、似ている要素を持たせた装置で代用し、擬似的に現象を再現します。
ここでは、ベルトコンベアを海洋プレートに見立て、その上に、バネが付いたブロックを並べた実験装置を使用します。
ベルトコンベアは、画面の向かって左に流れて行きます。
すると、ベルトコンベアに接地して乗っかっているブロックは、当然、一緒に左に流れて行きます。
伴って、ブロックに繋がったバネは、伸びます。
バネが戻ろうとする力が働き、「もうこれ以上はそっちに行けないよ」というところで耐えきれなくなると、バネがビヨンと戻り、ブロックはベルトコンベアの上を滑って、元の位置に引き戻されます。
この、「ビヨン、とブロックが元に戻る動き」が、地震の発生を表しているのです!
実際の様子は動画を見ていただけるとよくお分かりになると思いますが、ブロックは、ベルトコンベアが動き出した最初は、みんな一様にゆっくりと左に流れてゆくのに対し、戻る時の動きが、予想よりも結構ランダムです。
突如1個のブロックだけが戻ったり、しばらく1つも戻らない時間が続いたり、複数のブロックが同時に戻ったり。
そして、これこそが、地震の発生のしかたを表しているのだと言います。
ブロックの数の差異は、小さな地震と大きな地震の違いを再現しているわけです。
地震は、いつも同じ大きさで起きるわけではなく、発生する間隔も規則正しくないため、予測が困難だと言えるのです。
さて、さらなるプロフェッショナルな実験の説明や、参加者の質問への回答は、ぜひ動画でご覧ください。
学生さんたちの説明や仕切りが大変軽快で、とても楽しく見られました。
高校生のみなさんにとっては、まさに憧れの先輩方ですね!
2021年度 高校生のための東京大学オープンキャンパス
身近なもので出来る地震の実験!-地震の波の話-
この動画では、100円均一ショップで買った物や牛乳パックなど、身近な物で作れる実験装置を見せてくださるそうですよ。
まず1つ目の実験は、地震の揺れの伝わり方を可視化する実験です。
ここで、地震の揺れについて、確認しておきましょう。
1つの地震が起きると、大きく分けて2種類の地震波「P波」と「S波」が発生します。
P波は縦波で、地震発生時に最初に伝わる小さな「初期微動」です。
S波は横波で、波長が長いためにP波よりも遅れて伝わる、強い揺れのことです。
この2つの波が伝わる時間差が、緊急地震速報のメカニズムの鍵となっています。
まずは、地震計が一足先に伝わってくるP波をキャッチします。
それを元に、地震の規模・発生時刻などを予測した緊急地震速報が出されます。
次に、少しの時間を置いて、実際に我々が感じ取るような揺れ、すなわちS波がやって来るというわけです。
それでは、実験装置を見てみましょう。
おもりが紐で吊るされていて、バネで繋がれているこの装置を使って、2つの波の種類の違いを可視化することができるそうです。
おもりの列は地面を表しています。
これらのおもりを画面右から揺らすと、揺れは画面右から左へ伝わり、戻って来ます。
本当の地面で起きる地震の揺れは四方八方に揺れが伝わるものですが、この装置では一直線の方向だけを再現します。
まずは、S波の波の動きの再現を見てみましょう。
画面右端のおもりを、画面奥と手前の方向にグラグラとスイングさせると、その動きはゆっくりと画面左に向かって連鎖し、おもりの列はS字のウェーブを描くように緩やかに波打ちます。
その波は左に突き当たると、画面右に折り返して来ます。
それでは次に、P波の再現を見てみましょう。
画面右端のおもりを隣のおもりにぶつけるように動かすと、玉突き事故のように左に力が伝わり、おもりがどんどん左にぶつかっては戻ります。
その動きは、画面左にまで到達すると、画面右に向かってまた折り返して来ます。
おもりとおもりの間のバネが元に戻ろうとする力が直接作用して、さきほどの緩やかなカーブを描く揺れと比べ、小さな振動が力が速く伝わります。
同じ装置を、100円ショップで買ってきた物で作ることができるそうです。
ぜひ、みなさんもやってみてください!
文章で書かれているだけでは実際のおもりの動きをイメージしづらいと思いますので、ぜひ動画をご覧ください!
そして、動画の後半では、牛乳パックで作る地震計を紹介しています。
こちらも、ぜひ動画で続きをお楽しみください。
2021年度 高校生のための東京大学オープンキャンパス
学生実験:火山噴火実験
大学院生のゼミ生のみなさんによる実験です。
この動画では、火山の噴火を再現してくださっています。
皆さんは、噴火には何種類かあるのをご存知でしょうか。
溶岩が流れ出すものや、飛沫をあげて噴出するものなど、様々なスタイルがあります。
さて、まずは、火山の模型が用意されています。
次に、水飴に重曹を混ぜたもの、そして水飴にクエン酸を混ぜたものを用意します。
これら2つを混ぜると……?
化学反応を起こし、二酸化炭素が発生します。
この二酸化炭素の泡が水飴を押し上げて来る様子を、模型上で、噴火に見立てます。
ちょっと楽しそうです。
どうなるのか、ワクワクしますね。
実は、1つの噴火の中でも、その経過の中で、様相が変化することがあります。
まずは、二酸化炭素のガスが溜まって膨張して、中の圧力が高まり、耐えきれなくなって、シリコン栓が飛びます。
これは、噴火の始まり——「ブルカノ式噴火」です。
次に、溶岩が勢いよく流れ出しますが、これはキラウェア火山などで見られる「ハワイ式噴火」の様子と同じです。
そして、だんだんと、泡が沸々と出て来て、飛沫を上げ始め、これは「ストロンボリ式噴火」と同じ様子と言えます。
火山は、一見、表面では静かに見えていても、中で何が起きているか分からないものです。
様々な観測から得られたデータは、噴火の規模を見極めたり、予測したりすることに役立てられます。
おわりに
さて、今回は、いくつもの短い動画の紹介をさせていただきました。
こんな風に、様々な身近なものに置き換えたり、分かりやすい例えを使ったり、我々にも理解できるように、多くの工夫をしてくださっている地震研究所の皆さんに、盛大な拍手です。
とはいえ、研究所の皆さんは、普段はもっと本格的な機器やデータを使って、地震の観測や情報の周知に取り組んでいらっしゃいます。
日頃、我々がお世話になっているニュースの情報や緊急地震速報も、こういった大変な研究・調査に支えられているのですね。
もし、高校生の方や学部生の方がお読みになっていたら、ぜひ、進路選択のご参考に、地震研究所のチャンネルをご覧になってみてください。
素敵な先生方・先輩方が活躍する姿を見ることができますよ!
<文・加藤なほ>
今回紹介した講義:高校生のための東京大学オープンキャンパス 2020
●他の講義紹介記事はこちらから読むことができます。