皆さんは、自分の住んでいる都市がどのように作られ、どんな問題を抱え、今後どうなっていくのか、考えたことはありますか?
都市や都市環境、都市に住む人々がつくり出す社会を、持続可能かつより良いものにするための学問の一つが「都市工学」です。
東京大学の工学部には「都市工学科」があり、現在は「都市計画コース」と「都市環境工学コース」の2つのコースがあります(詳細は学科HPをご覧ください)。
今回は、そんな都市工学科出身で、長年、都市工学科で教鞭を執られてきた浅見泰司教授(肩書は講演当時)の最終講義「都市解析から都市住宅論へ」をご紹介します。
浅見先生の生い立ちや研究者人生を追いながら、都市工学、その中でも都市解析や都市住宅論など浅見先生がご専門とされてきた分野をご紹介します。
数学好きの少年は都市解析の道に
講義は浅見先生の誕生から始まり、その歩みと研究人生について語られています。
小学生の頃の浅見先生は算数が好きで、虫食い算に熱中していたそうです(国語の授業時間にもこっそり解いていたとかいないとか…)。
当時は「鉄腕アトム」のアニメが流行していて、浅見先生はアトムではなくお茶の水博士に憧れ、研究者になるという夢をもちました。
その後、中学・高校でも好きな教科は数学でした。
そして東京大学理科Ⅰ類に入学し、進学する学部・学科を選ぶことになります。
数学が大好きだった浅見先生ですが、数学で身を立てるよりも、数学を使って何かをする研究をしたいと考え、工学部の中でもまだ数学慣れしていなそうな学問に進もうと考えました。
そこで、当時は「文科Ⅳ類」などと言われることもあった都市工学科を選択します。(東京大学には文科Ⅲ類までしかなく、理系なのに文系に近い研究が多かったことから都市工学科が「文科Ⅳ類」と言われていたそうです)。
進学後、後に指導教員となる先生の授業をきっかけに、都市解析を専門とします。
都市解析とは「都市現象を数理的に分析する分野」で、東大の都市工学科から始まった分野だそうです(そもそも日本の都市工学自体も東大から始まったそうです)。
都市計画のため、また都市や空間の現象を理解するため、シミュレーションや数理モデル(経済モデルや統計モデルなど)を用いて分析します。
例えば、人の流れ・動きを解析することで、拠点となる施設の立地などについて分析したり、人口減少を加味して公共交通やインフラ設備の適正化をしたりといった研究が行われています。
実際に、浅見先生も卒業論文では重回帰分析(統計学的手法)を用いて都市化の要因分析に取り組みました。
浅見先生の幼少期〜学生時代のエピソード、取り組まれた研究・業績については、講義内でたくさんご説明されているのでぜひご覧ください!
都市解析から都市住宅論へ
さて、その後アメリカの大学に進学し博士号を取られた浅見先生は、東大に戻ってきて助手となります。
所属した研究室では、都市解析と住宅問題という2つの分野が主な研究領域でした。
住宅問題を専門としていた下総薫先生の退職に伴い、この領域を浅見先生が担当することになります。
しかし、下総先生とは経歴も異なり、全く同じ研究はできないと考えた浅見先生は、自分の専門を生かしつつ、新たな住宅問題を論じたいと考えます。
そして「住宅問題」というと問題点ばかりを論じる授業になってしまうと考え、「都市住宅論」という名前に変え、授業・研究を始めていきます。
都市住宅論では、下の画像のように理論研究と実証研究の2つを柱としました。
研究者は生涯ずっと同じ研究をしていると思われる方もいるかもしれませんが、研究領域が変わったり、複数にまたがったりすることは珍しくありません。浅見先生の研究者人生を追うことで、その意味がお分かりになるかと思います。
その後、講師、助教授、教授となり、専攻長や工学系の副研究科長、副学長などを歴任していきます。
この間の業績や研究に関するエピソードなども、学生時代同様、講義でたくさん語られているので、ぜひご覧ください。
都市計画への思い入れ
講義の終盤、浅見先生は都市計画全般についての現状の問題点や改善点などについて話されています。
まず、日本の都市計画の基本ルールである都市計画法については、現在の都市を十分にコントロールできない点を指摘します。
都市計画法が制定されたのは大都市への人口集中など人口増加社会が問題となった高度成長期で、人口減少局面となった現在では機能していない仕組みがいくつかあるそうです。
その解決策の一つに、「クロノデザイン」という考え方を挙げています。
これまで空間的な価値のみを重視してきた都市計画で時間的な価値も考える、つまり都市の時間経過も考えた計画をするというものです。
講義では、クロノデザインについての詳しい説明や、用途地域制度の課題や人口減少への対応といったその他のテーマについても紹介されています。
都市計画に少しでも興味がある、また興味を持った方(そして浅見先生に興味を持った方)は、ぜひ講義をご覧ください!
<文/おおさわ(東京大学学生サポーター)>
今回紹介した講義:2025年3月8日開催:東京大学大学院工学系研究科 浅見泰司教授 最終講義「都市解析から都市住宅論へ」
編集者註:浅見先生は2021年より2026年現在まで、東大TVやUTokyo OCWを運営する大学総合教育研究センターのセンター長を務めており、東京大学の全体に関わる教育の質の向上やそのための支援活動に尽力されています。




