【東大の99%は森林!?】東大の演習林と、日本の森林の今と未来(「データで見る日本の森林の実態と未来可能性」蔵治 光一郎先生)
2025/08/21

いきなりですが問題です。東京大学の敷地面積の99%は○○なのですが、○○に入るのは何でしょうか?

タイトルから分かってしまいますよね、すみません。

そう、東京大学の敷地面積の99%は森林なのです。これは、東京大学が「演習林」というものを所有しているからです。

今回は、そんな東京大学の演習林の重要性も分かる、日本の森林の現状と未来がテーマの講義「データで見る日本の森林の実態と未来可能性」をご紹介します。お話しされるのは農学生命科学研究科の蔵治光一郎先生です。

130年以上の歴史がある東京大学の演習林

東京大学の演習林は、北海道、千葉、埼玉、東京、山梨、静岡、愛知にあります。

出典:研究,東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林.
https://www.uf.a.u-tokyo.ac.jp/research/

その総面積は東大の敷地の99%であると紹介しましたが、面積にすると約33,000ha(ヘクタール)。haといわれてもどれくらいか分からない方も、国土の0.1%、23区の約半分の面積と聞けばその広さが分かるのではないでしょうか。また、これは2019年度に東大が排出した二酸化炭素の71%を演習林で吸収できるくらい大きいそうです。

演習林はその名の通り、森林に関連した研究・教育に使われています。駒場の前期教養(東大の1、2年生)向けのものだけでも、2019年には約40科目で使われ、毎年400人くらいが演習林を利用していました。

UTokyo Online Education 高校生と大学生のための金曜特別講座 2021 蔵治光一郎

蔵治先生は森林に関する研究・教育の重要な点として、変化に時間がかかることを挙げています

例えば人間が木を切って、そこに新たな木を植えた場合、大きくなるまでに50年はかかります。

したがって、現在の森林の姿は、50年前の人たちが思い描いていた森林の姿ともいえます。つまり、現在の私たちの行動は、未来の森林の姿に繋がります

そのため、次世代への責任として、大学においても森林に対して正しい理解をして、森林の未来について考えてもらうことを大切にして教育を行っているそうです。

ぜひみなさんもこうした背景を知ったうえで、講義を視聴してみてください。

また、研究という観点では、過去のデータを蓄積している点が東大演習林の強みであると蔵治先生はおっしゃっています。

日本初となった最初の演習林は1894年に千葉に設置されました。そのため、東大の演習林では、50年以上前から継続して行われている取り組みや研究がいくつもあるそうです。

まだまだ科学的知見が必要な課題が多くある森林・林業について、こうした過去からの蓄積も活かして学ぶことができるのです。

森林も少子高齢化が進んでいる!?

ここからは、演習林から日本・世界に視野を広げ、森林の現状について学んでいきます。

日本は森林大国であるというのは小学校や中学校でも習うため、みなさんご存知だと思います。国土の68%が森林で、下の画像からも分かるように、人口密度の多い国の中ではトップクラスの森林面積率です。

UTokyo Online Education 高校生と大学生のための金曜特別講座 2021 蔵治光一郎

世界全体を見ると、森林の総面積は毎年約0.1%ずつ減少しています(講義当時)。

地域別にみると、下の画像で赤くなっているブラジルやインドネシアなどでは特に減少している一方、緑になっている中国などでは植林が積極的に行われ、増加しています。

UTokyo Online Education 高校生と大学生のための金曜特別講座 2021 蔵治光一郎

そして日本は、ほとんど増減していません。

日本では1955年~70年ごろの高度成長期に住宅建設の増加などで木材需要が増加し、伐採と植林が多く行われました。しかし、その後は伐採・植林があまり行われなくなっているそうです。

それが分かるのが下の画像のような「人工林ピラミッド」と呼ばれるもの。人口ピラミッドと似たようなもので、真ん中に書かれている数字×5が木の年齢になります。

UTokyo Online Education 高校生と大学生のための金曜特別講座 2021 蔵治光一郎

5より上、つまり50年以上前に行われた植林が多い一方で、最近(下の方)は植林が少なく若い木が少ないことが分かります。つまり、日本の人工林でも少子高齢化が進んでいるということです。

では、伐採・植林が行われず、少子高齢化が進んでしまうと何が困るのでしょうか?

人工林を放置してしまうと…?

人工林を定期的に伐採・植林をせず、放置してしまうと何が起きるのでしょうか?

その大きな問題の一つが、災害に繋がってしまうということです。

人工林は成長して放置すると、密集して葉が広がらなくなる一方で、幹は光を求めて細いまま上に伸びていってしまいます。そうすると、雨が降ったときに葉からの雨滴の落下速度が大きくなり、地面を強く削ってしまいます。木で覆われて他の植物があまり育たず、また落ち葉などもない場合、土が削られて木の根が露出してしまいます。こうなると、大雨の際などに倒木や土砂災害が起きやすくなってしまいます

UTokyo Online Education 高校生と大学生のための金曜特別講座 2021 蔵治光一郎

自然林の場合は、年齢(樹齢)の異なる多くの種類の木が自然に育つのでこのようなことは起きにくく、規則正しく同じ木を植える人工林ならではの問題だそうです。

未来の森林のために

では、なぜ最近は人工林の伐採・植林が行われていないのでしょうか?また、森林の抱える問題について、将来に向けてどのように取り組んでいく必要があるでしょうか?
講義ではこれらの点についても詳しく紹介されています。

そして、講義後半の質疑応答では、森林の少子高齢化のメリット・デメリットや動物との関連、産業との繋がりなどにも触れられています。

講義を視聴して、50年、100年先の森林について考えてみてください。

また、2025年9月30日まで、東大柏キャンパスの図書館では、この記事でも紹介した日本で最古の演習林である千葉演習林に関する企画展示「千葉で始まった東京大学演習林の歴史」が行われています。この展示に関する講演のアーカイブ(2025年9月30日まで視聴可)もあるので、東大の演習林に興味を持った方はぜひご覧ください!

<文/おおさわ(東京大学学生サポーター)>


今回紹介した講義:2021年度:高校生と大学生のための金曜特別講座 データで見る日本の森林の実態と未来可能性 蔵治光一郎先生

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