特集:アメリカを知る、日米を考える
2022/01/18

皆さんは「アメリカ」を知っていますか? 
一口にアメリカと言ってもその切り口は様々です。
例えば、今もメディアやインターネット上で注目を集めている大統領選ひとつを取ってみても、様々なことが見えてくるようです。

今回の特集では、はじめにそうした大統領選にまつわる動画や、対外的な経済政策についての動画、多言語・多人種が生み出す文化や国民的作家についての動画を取り上げます。
それぞれ異なる視点から捉えた動画ではありますが、並べて見てみると互いに関連しあう問題が徐々に浮かび上がってきます。

そして後半では、アメリカのみに焦点を当てるのではなく、日米関係を扱っている動画を2本セレクトしました。
アメリカという他国をつぶさに見ることで、翻ってどんな日本の姿が浮かび上がってくるのでしょうか。
トランプ政権からバイデン政権への移行期のこの今、アメリカという国について、日本という国について、考えてみる機会としてご活用いただければ幸いです。


オバマを大統領にした男:マーシャル・ガンツによる「市民の力で社会を変える」――特別講演「Global Leadership Program 公開セミナー」
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──バラク・オバマ。
ドナルド・トランプ氏の前任を務めた第44代目アメリカ大統領は、合衆国史上初の有色人種の大統領でした。

さて、皆さんは覚えていらっしゃいますでしょうか? 
彼が大統領選時のスピーチに「Yes We Can」や「CHANGE」といったフレーズを効果的に利用していたことを。
彼の選挙運動はまるで社会現象のように取り沙汰され、アメリカだけでなく世界中に伝播してゆきました。
しかし実際のところ、大統領選が始まった当初は、彼は泡沫候補にすぎなかったのです。
そんな彼が、どのようにして下馬評を覆し、大統領になることができたのでしょうか。

「パブリック・ナラティブ」と「コミュニティ・オルガナイジング」というキーワードを元に、オバマ元大統領の立役者マーシャル・ガンツ氏らが社会改革の手法について討議します。


久保文明「政治への不満が爆発するとき-トランプ現象を事例として」――2017年度公開講座「爆発」


後に紹介する動画とも関連しますが、「人種の坩堝」と形容される移民大国アメリカでは、しばしば人種間での対立が勃発します。
そうした背景の中、2016年には、メキシコからの不法移民に対し強い非難を叫んで話題をさらったドナルド・トランプ氏が大統領選に勝利し、先に紹介したバラク・オバマ大統領に代わって第45代アメリカ大統領に就任しました。
事前の世論調査では、対立候補である民主党のヒラリー・クリントン氏が優勢だった中、強硬的な発言を繰り返すトランプ氏がなぜ選挙に勝てたのでしょうか。
当時のトランプ氏の勝因を、アメリカ政治学がご専門の久保史明先生が詳細に分析しています。


Fireside Chat Regarding U.S. International Economic Engagement [英語]――2019年度「アメリカの国際的経済関与についてスペシャルトークセッション」


環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の離脱、大西洋横断貿易投資パートナーシップ協定(TTIP)の交渉を中止。
トランプ政権下のアメリカは、グローバリズムから一転して、保守貿易主義を打ち出しました。
もう一つの大国・中国と苛烈な貿易戦争を繰り広げ、その様子は連日報道されたことから、私たちの印象にも強く残っているかと思います。

こちらは藤原帰一先生と米国国務省次官のキース・グラック氏のトークセッションです。
国際政治学の専門家と、外交を担う国務省で行政に携わる人物は、2019年当時のアメリカの対外的経済政策についてどんな意見を取り交わしているのでしょうか。
トランプ政権のこれまでを振り返るためだけでなく、これからのバイデン政権の行末を占うためにもぜひ見ておきたい動画です。


平石貴樹「分析力・洞察力・想像力 エドガー・アラン・ポーをめぐって」――2012年度公開講座「想像力」


アメリカ合衆国史上、最初の専業作家が誰かご存知ですか?
正解は「エドガー・アラン・ポー」です。
世界初の推理小説と言われる『モルグ街の殺人』の著者はミステリの父として有名ですが、同時にまた、アメリカで最初に文筆業のみで生計を立てた人物としても知られているのです。

この動画では、そんなポーの宇宙論『ユリイカ』を俎上に上げ、文学的感性と当時の科学的知見に共通しているかもしれない「想像力」について探究していきます。
その導き手は平石貴樹名誉教授。
フォークナーがご専門のアメリカ文学者の方ですが、本人自身も小説家としてご活躍されています。
学術的・批評的な価値はもちろんのこと、数々のポーの作品を下敷きにした本格ミステリ『だれもがポオを愛していた』の著者である平石先生がポーについて語っているという点では、ミステリファン垂涎の動画でもあるかもしれません。


柳原孝敦「チカーノの悲しみと怒りに耳を澄ませて」――2018年度オープンキャンパス 文学部模擬講義


アメリカの公用語って何語かご存知ですか? 
英語でしょ?
って思った方、実は違うのです。

というか、アメリカには公用語の規定がそもそも存在しないのです。
もちろん一番多く用いられている言語は英語ですが、多民族が暮らすアメリカでは、フランス語やチャモロ語など実に多くの言語が使用されています。

そして、英語の次にアメリカで話されているのがスペイン語です。
この講義では、英語圏ではなく、スペイン語圏の文学研究をしている柳原孝敦先生を講師に迎え、チカーノと呼ばれるメキシコ系アメリカ人たちの文化を紹介しています。

英語とスペイン語が混交したスパングリッシュを用いる彼らの戯曲や小説、音楽には、一体どんな思いが込められているのでしょうか。


吉見俊哉「戦後日本におけるアメリカニズムと権力」――2007年度公開講座「力<チカラ>」


なぜ、日本はここまで親米的なのでしょう? 
情報学環の吉見俊哉先生は、まずこの問いから出発します。

動画内ではその事実がきちんとデータで示されていますが、そうではなく漠然とでも、日本はアメリカに好感を抱いているな、と感じる方も多いと思います。
でも本当に、なぜなんでしょう?

ある人は、アメリカの大衆消費文化の魅力を理由をあげるかもしれません。
しかし、これではどうやら説明がつきそうにありません。
もしこの理由が妥当ならば、アメリカの消費文化を受け入れいてる他国も同様に親米感情が高いはずなのに、日本ほど高い数値は示していないからです。

また、ある人は日本の親米感情の高さを戦後復興と結び付けて考えるかもしれません。
しかし、戦後の直後ならともかく、今現在も親米感情が持続するのはやはり不可解です。

では一体、なぜ? 
吉見先生が動画内で唱える仮説は、この疑問に対して見事な回答を与えてくれます。


阿部誠「ものづくりを諦めたアメリカ、マーケティングの出来ない日本:顧客の力を探る」――2007年度公開講座「力<チカラ>」


「アメリカは、ものづくりができないのではなく、やりたくないのである」
アメリカ帰りの阿部誠先生は、現地での生活を概観して、こう導き出します。

どういうことでしょうか? 

つまり、合理性を貫くために、コストのかかるものづくりは海外に外注してしまうのが当時のアメリカの現状だったのです。
今風に言い直せば「ものづくりはコスパが悪い」とでもなるでしょうか。

翻って日本の産業はどうなのでしょうか。
実は、日本も同じような状況に陥っており、製造業志向の『ものづくり』から変身しなければ日本に未来はないと、阿部先生は2007年当時の日本の産業に暗い予見をしています。

では、具体的にどうすれば良いのでしょう。
その詳細は、ぜひ動画で確かめてみてください。


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