東京大学公開講座「ホネ」
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ホラホラ、これが僕の骨だ 生きてゐた時の苦労にみちた あのけがらはしい肉を破って しらじらと雨に洗はれ ヌックと出た骨の尖(さき)(中原中也『骨』より) 今秋の東京大学公開講座は、「ホネ ― 万物を架橋する」をテーマとして開講することとなりました。 脊椎動物である人間(ヒト)にとって、ホネは生きている間ずっと肉体を支えてくれる不可欠な存在であることは言うまでもありません。人間はまた、自分たちの死後に通常残る唯一の部分として、ホネに特別な思いを抱いてきました。そして、私たちの中だけでなく、周囲のあらゆるモノの中にホネを見出しつつ、ホネを用いて多くのモノを構築してきました。
しかしながら、ホネは目立たない存在でもあります。生きている間に自分の骨をじかに見ることは滅多にありません。しかし、ホネを折ったり、関節の具合が悪くなったりすれば、すぐに分かるし、生活に大きな支障が出ます。私たちの周囲にある様々な構造物の骨組も、普段は外壁に覆われており、私たちの目には触れません。しかし、つねに支え、繋ぐ機能を果たしています。そして何かがあったときには、その骨組の強度が問題となります。さらには、人の気骨も普段はその人の中に秘められていながら、いざというときにこそ顕わになるものです。社会の骨格も有事にこそ真価が問われます。
このように、普段は隠れた存在ながら、ホネはその硬さとともに「しなやかさ」、「したたかさ」を備えていることが求められているのです。こうした特徴を兼ね備える様々なホネの仕組はいったいどうなっているのでしょう。そして、様々なホネにどのような意味を見いだしてきたのでしょう。
今回の公開講座では、人間その他の動物のホネから、様々な物体や構造物の中のホネ、さらには、宇宙の骨格にいたるまでのホネとその不思議について各分野の専門家に語っていただきます。この連続講義をつうじて、人間や人間社会、そして人間社会を取り巻く自然界の有様に迫る契機としたいと思っています。